デニスだけでもスタンダードに育ってほしい
うちは、レイも私も常識を逸していると思う。
というのも、クリスマスカード(日本だと年賀はがきみたいなご挨拶)も出さないし。
むろんお歳暮やクリスマスギフトなんて上司に贈ることもない。
レイなんて、自分は贈らないのに、以前は上司からギフトをもらっていたが、それでも
ご贈答などやらなかった。
そんな中、
デニスが、突然に
「明日は僕のバースデーだから、カップケーキやジュースをクラスで配りたい」と言い出した。
「えぇ~~~っ、前にバースデー近いから
ホールフーズでカップケーキを買ってあげようかって言ったら、
何も返事しなかったじゃん」と私。
「デニス、今日は、お母さんのバースデーだ。お母さんがリラックスしたいそんな日にかぎって、
外へ行ってカップケーキを買うなんて、あんまりに自分勝手じゃないか」とレイ。たしかに
母を思えば、もっともである。
デニスは最初はあきらめたのだが、どうしても買いたいという理由を聞けば
どうやら、同じ日にバースデーの優等生のアビゲルが、
「デニスは何を持っていくの?」と聞いてきたらしい。
アビゲルは背の高いブラックの女の子で、まるでオバマの娘のように
落ち着いた風貌な優等生。お祝い、バースデー、音楽の発表会、優秀な生徒の授賞式など、
スタンダードな行いは必ずなしとげるのだ。母親もPTA会長ノリな教育熱心なママ。
アメリカの優等生っていうのは、そうした誰もが認めるちょっとした
トラディッションを必ずやりとげる。
アメリカでのバースデーのトラディッションは、カップケーキをクラスへ持っていくこと。らしい。。。
去年は、ヨーグルトカップなどをもっていったりしたけど。それでは、生っちょろいようだ。
コテコテに甘いカップケーキ、そしてその甘いカップケーキを胃袋へ流し込む、
砂糖でドロドロなフルーツジュースが必要なのだとか。
「えぇ~~~っ、そんなケミカル(化学加工品)なものを買いたくないよ。あなたたちは普段も
お父さんに禁じられていて食べれないじゃない。自分が普段食べれないから、
食べたいだけなんじゃないの」と私。
「ちがうよ。デニスは、みんなに僕のバースデーを祝ってほしいんだ」とデニス。さっきまでは、
「自分のバースデーにカップケーキを配るなんて馬鹿げたことはやめておけ」とレイにクギを刺され
泣いていたわけで。。。
レイは昭和な父なので、アメリカのトレンドについていってない。
「お父さんは、かなり考え方に時代のギャップがあるから、デニスは
自分が正しいって思ったことを選択していいのよ。
お父さんの生き方が今の時代に正しいとは限らないし。あなたは自分を殺さずに、
自分でしっかり考えて行動しなさい」と、デニスに諭した。
「だけど。。。お父さんがそう言ってるし」と弱気になるデニス。
「あやを少しは見習ったら?お父さんは動物を飼うことが大嫌いだけど、あやは、ハムスターを育てるという
自分がやりたいことを通すため、お父さんの嫌がらせにも負けずに、ハムスターを育てているのよ。
『ハムスターがいるから、ここの家の土地が狭い』とか、『ハムスターハンドでキッチンに立つなよ、洗ってこい』
とか、あやがお父さんから、どれほど嫌がらせ言われてるか知ってるよね?
人間、何をやるにも誰かの反対があるのは当たり前なの。
それに負けずに、自分の信念を貫いてこそ、やりたいことを実現
できるのよ。あなたは、いつも自分ばかりが我慢せずに、
何なりと自分のやりたいことを全うするべきだと思う」
デニスは、その言葉に、なんとか自分がやりたい方向性を決めたらしい。
「お母さんが誕生日でリラックスしたいのはわかるけど、申し訳ないけど
カップケーキを買いに行きたい」と一言。
「OK。デニスがやりたいことへのバックアップだったら。お母さんが同意できることであればやるから」と私。
ほかの子がゲームセンターを貸し切ってお友達を誘うなんていう、お金をかけたバースデーパーティーだって、
いつもやってあげていないのだから、
せめて子供がやりたいって言ってる、ケミカルなカップケーキくらいは買ってあげようと思う。
デニスと二人、マイナス12度近くの中、CVSドラッグストアへ行くと、
まさしくそこで優等生のアビゲル母娘に会った。
「あらあら、こんなところで、明日のバースデーで奔走する親子が対面しちゃったわね」とアビゲルママ。
私も、「そうよ、うちも明日のバースデーのために大忙しなの」とアビゲルママに笑い返す。
デニスが、「ほら、アビゲルも自分のバースデーのためにがんばってるでしょ」と彼らが去ってから一言。
正直、自分のバースデーにがんばるっていうのが、レイがわからないのと同様、私にもわからないけど。。。
これがアメリカではトラディッションなのか。。。
ただしここにはケミカルなカップケーキが売ってなかった。ので、ストップ&ショップというスーパーマーケットへ
移動することとなった。
「お母さん、本当にごめんね。せっかくのバースデーなのに」デニスが申し訳なさそうに、言う。
「いいよ、本当はお母さんも面倒くさいけど。あなたがやりたいことなんだから、
お母さんもがんばるよ。人の協力を得るってことは、面倒なことがたくさんあるってことでも
あるのだよ。
それをわかってでもちゃんとやっていかないと、自分のやりたいことはいつまでたっても
やれないのだから。自分一人ではやれないのだからね」と私。
なんだか、こういう小さなことでも、親がおぜん立てしてやっていくわけじゃなく、子供がやりたいという
ことに協力することで、子供は社会について、人とのつながりについて学んでいく
ものなのだなぁ~という気がしてきた。
デニスは、砂糖やチョコにコーティングされたドーナツのパックと
私の意見に耳をかたむけて、甘味料の少ないオーガニックのフルーツジュースを買った。
もちろんレイは、「親が、そんなケミカルでシュガーリーなものを奨励して食わせてどうする」と
憤っていた。
デニスはケミカルなバースデースナックに満足顔で、寝息をたてた直後、再び起きてきて、
「ドクターデイビス(担任)に、連絡を入れておかないと、バースデーの用意がだぶっていたり、
バースデーやる時間がなくなったりしないかなぁ~」と心配していた。
いやはやたかが自分のバースデーなのに、緊張感がハンパない。
まーでも人間、緊張感こそが人生のメリハリでもあるわけで。
ともかくデニスの今回の常識的行動により、かなり私も偉そうなことを言わせてもらった。
こうして私たちが、面倒くさがりな親だからこそ、子供が自立してくれるのだ。
あぁ~、よかった。
弘恵ベイリーTwitter

NYジャピオン「35歳だった」を執筆中
NYで活躍する日本人エンターテイナーを応援するサイトNY1PAGEもよろしく!
http://ny1page.com
というのも、クリスマスカード(日本だと年賀はがきみたいなご挨拶)も出さないし。
むろんお歳暮やクリスマスギフトなんて上司に贈ることもない。
レイなんて、自分は贈らないのに、以前は上司からギフトをもらっていたが、それでも
ご贈答などやらなかった。
そんな中、
デニスが、突然に
「明日は僕のバースデーだから、カップケーキやジュースをクラスで配りたい」と言い出した。
「えぇ~~~っ、前にバースデー近いから
ホールフーズでカップケーキを買ってあげようかって言ったら、
何も返事しなかったじゃん」と私。
「デニス、今日は、お母さんのバースデーだ。お母さんがリラックスしたいそんな日にかぎって、
外へ行ってカップケーキを買うなんて、あんまりに自分勝手じゃないか」とレイ。たしかに
母を思えば、もっともである。
デニスは最初はあきらめたのだが、どうしても買いたいという理由を聞けば
どうやら、同じ日にバースデーの優等生のアビゲルが、
「デニスは何を持っていくの?」と聞いてきたらしい。
アビゲルは背の高いブラックの女の子で、まるでオバマの娘のように
落ち着いた風貌な優等生。お祝い、バースデー、音楽の発表会、優秀な生徒の授賞式など、
スタンダードな行いは必ずなしとげるのだ。母親もPTA会長ノリな教育熱心なママ。
アメリカの優等生っていうのは、そうした誰もが認めるちょっとした
トラディッションを必ずやりとげる。
アメリカでのバースデーのトラディッションは、カップケーキをクラスへ持っていくこと。らしい。。。
去年は、ヨーグルトカップなどをもっていったりしたけど。それでは、生っちょろいようだ。
コテコテに甘いカップケーキ、そしてその甘いカップケーキを胃袋へ流し込む、
砂糖でドロドロなフルーツジュースが必要なのだとか。
「えぇ~~~っ、そんなケミカル(化学加工品)なものを買いたくないよ。あなたたちは普段も
お父さんに禁じられていて食べれないじゃない。自分が普段食べれないから、
食べたいだけなんじゃないの」と私。
「ちがうよ。デニスは、みんなに僕のバースデーを祝ってほしいんだ」とデニス。さっきまでは、
「自分のバースデーにカップケーキを配るなんて馬鹿げたことはやめておけ」とレイにクギを刺され
泣いていたわけで。。。
レイは昭和な父なので、アメリカのトレンドについていってない。
「お父さんは、かなり考え方に時代のギャップがあるから、デニスは
自分が正しいって思ったことを選択していいのよ。
お父さんの生き方が今の時代に正しいとは限らないし。あなたは自分を殺さずに、
自分でしっかり考えて行動しなさい」と、デニスに諭した。
「だけど。。。お父さんがそう言ってるし」と弱気になるデニス。
「あやを少しは見習ったら?お父さんは動物を飼うことが大嫌いだけど、あやは、ハムスターを育てるという
自分がやりたいことを通すため、お父さんの嫌がらせにも負けずに、ハムスターを育てているのよ。
『ハムスターがいるから、ここの家の土地が狭い』とか、『ハムスターハンドでキッチンに立つなよ、洗ってこい』
とか、あやがお父さんから、どれほど嫌がらせ言われてるか知ってるよね?
人間、何をやるにも誰かの反対があるのは当たり前なの。
それに負けずに、自分の信念を貫いてこそ、やりたいことを実現
できるのよ。あなたは、いつも自分ばかりが我慢せずに、
何なりと自分のやりたいことを全うするべきだと思う」
デニスは、その言葉に、なんとか自分がやりたい方向性を決めたらしい。
「お母さんが誕生日でリラックスしたいのはわかるけど、申し訳ないけど
カップケーキを買いに行きたい」と一言。
「OK。デニスがやりたいことへのバックアップだったら。お母さんが同意できることであればやるから」と私。
ほかの子がゲームセンターを貸し切ってお友達を誘うなんていう、お金をかけたバースデーパーティーだって、
いつもやってあげていないのだから、
せめて子供がやりたいって言ってる、ケミカルなカップケーキくらいは買ってあげようと思う。
デニスと二人、マイナス12度近くの中、CVSドラッグストアへ行くと、
まさしくそこで優等生のアビゲル母娘に会った。
「あらあら、こんなところで、明日のバースデーで奔走する親子が対面しちゃったわね」とアビゲルママ。
私も、「そうよ、うちも明日のバースデーのために大忙しなの」とアビゲルママに笑い返す。
デニスが、「ほら、アビゲルも自分のバースデーのためにがんばってるでしょ」と彼らが去ってから一言。
正直、自分のバースデーにがんばるっていうのが、レイがわからないのと同様、私にもわからないけど。。。
これがアメリカではトラディッションなのか。。。
ただしここにはケミカルなカップケーキが売ってなかった。ので、ストップ&ショップというスーパーマーケットへ
移動することとなった。
「お母さん、本当にごめんね。せっかくのバースデーなのに」デニスが申し訳なさそうに、言う。
「いいよ、本当はお母さんも面倒くさいけど。あなたがやりたいことなんだから、
お母さんもがんばるよ。人の協力を得るってことは、面倒なことがたくさんあるってことでも
あるのだよ。
それをわかってでもちゃんとやっていかないと、自分のやりたいことはいつまでたっても
やれないのだから。自分一人ではやれないのだからね」と私。
なんだか、こういう小さなことでも、親がおぜん立てしてやっていくわけじゃなく、子供がやりたいという
ことに協力することで、子供は社会について、人とのつながりについて学んでいく
ものなのだなぁ~という気がしてきた。
デニスは、砂糖やチョコにコーティングされたドーナツのパックと
私の意見に耳をかたむけて、甘味料の少ないオーガニックのフルーツジュースを買った。
もちろんレイは、「親が、そんなケミカルでシュガーリーなものを奨励して食わせてどうする」と
憤っていた。
デニスはケミカルなバースデースナックに満足顔で、寝息をたてた直後、再び起きてきて、
「ドクターデイビス(担任)に、連絡を入れておかないと、バースデーの用意がだぶっていたり、
バースデーやる時間がなくなったりしないかなぁ~」と心配していた。
いやはやたかが自分のバースデーなのに、緊張感がハンパない。
まーでも人間、緊張感こそが人生のメリハリでもあるわけで。
ともかくデニスの今回の常識的行動により、かなり私も偉そうなことを言わせてもらった。
こうして私たちが、面倒くさがりな親だからこそ、子供が自立してくれるのだ。
あぁ~、よかった。
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Comment
お誕生日おめでとうございます
いつも楽しく読ませて頂いています。ひろえさんもデニス君もお誕生日おめでとうございます。とってもいいお母さんですね。きっとクラスに配った誕生日カップケーキの思い出大きくなっても覚えてるでしょうねー。
Re: お誕生日おめでとうございます
ありがとうございます!
> いつも楽しく読ませて頂いています。ひろえさんもデニス君もお誕生日おめでとうございます。とってもいいお母さんですね。きっとクラスに配った誕生日カップケーキの思い出大きくなっても覚えてるでしょうねー。
> いつも楽しく読ませて頂いています。ひろえさんもデニス君もお誕生日おめでとうございます。とってもいいお母さんですね。きっとクラスに配った誕生日カップケーキの思い出大きくなっても覚えてるでしょうねー。
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